旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
【後日談】紫の誓い/ソフィアSide
【ソフィアSide】
長かった夏が終わり、秋の気配が訪れる頃。
夜の帳が下りたウィンダム邸では、ソフィアが一人、作業部屋の椅子に腰かけ、静かに針を動かしていた。
膝の上にあるのは、レイモンドのために仕立てた白いシルクのベスト。彼女は今、その左胸の裏側――着用した際、彼の心臓が脈打つ場所に、一本の糸を走らせていた。
選んだのは、高貴で艶やかな「紫」。
『次も紫がいい。君の瞳の色だから』
そう言って、独占欲を隠そうともせず笑ったレイモンドの顔を思い出し、ソフィアは微笑む。鉄の規律を重んじてる彼が、今や妻の瞳の色を纏うことを何よりの誇りとしている――それが、何だか少し可笑しくて、嬉しかった。
(……よし。これで、完成ね)
最後のひと針を終え、糸を引く。
満足げに息を吐き、出来上がった服を眺めていた、その時。
「……まだ起きていたのか」
低く、どこか甘さを孕んだ声が静寂を破った。
振り返ると、そこには寝衣を纏ったレイモンドが立っていた。扉を叩く音すら聞こえないほど、彼は静かに部屋に入って来たらしい。あるいは、自分が集中しすぎていただけかもしれないが。
「ええ、あと少しで完成だったものですから。旦那様こそ、お仕事は終わったのですか?」
「どうにかな。……それは完成したのか?」
「はい。ご覧になりますか?」
「ああ、見せてくれ」
長かった夏が終わり、秋の気配が訪れる頃。
夜の帳が下りたウィンダム邸では、ソフィアが一人、作業部屋の椅子に腰かけ、静かに針を動かしていた。
膝の上にあるのは、レイモンドのために仕立てた白いシルクのベスト。彼女は今、その左胸の裏側――着用した際、彼の心臓が脈打つ場所に、一本の糸を走らせていた。
選んだのは、高貴で艶やかな「紫」。
『次も紫がいい。君の瞳の色だから』
そう言って、独占欲を隠そうともせず笑ったレイモンドの顔を思い出し、ソフィアは微笑む。鉄の規律を重んじてる彼が、今や妻の瞳の色を纏うことを何よりの誇りとしている――それが、何だか少し可笑しくて、嬉しかった。
(……よし。これで、完成ね)
最後のひと針を終え、糸を引く。
満足げに息を吐き、出来上がった服を眺めていた、その時。
「……まだ起きていたのか」
低く、どこか甘さを孕んだ声が静寂を破った。
振り返ると、そこには寝衣を纏ったレイモンドが立っていた。扉を叩く音すら聞こえないほど、彼は静かに部屋に入って来たらしい。あるいは、自分が集中しすぎていただけかもしれないが。
「ええ、あと少しで完成だったものですから。旦那様こそ、お仕事は終わったのですか?」
「どうにかな。……それは完成したのか?」
「はい。ご覧になりますか?」
「ああ、見せてくれ」