推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

この優しさ、現実ですか?(10)

 その言葉に、私は思わず苦笑いを浮かべた。
 気にならないわけがない。でも、当選していればメールが来る。時差があるとはいえ、今の時点で届いていないなら、望みは薄い。
「いや~。気にはなりますけど、当選していればメールが来ますから」
「そのメールは?」
「今のところはまだ……」
 私の答えに、成瀬さんは少し考えるような仕草を見せた後、にっこり笑った。その真意が読めず、私は首を傾げる。
 「メールを待つより、ファンクラブのサイトで確認した方が早いですよ。今、見ましょう」
「え? 今ですか?」
 意味が分からず聞き返すと、彼は笑ってうなずいた。
 確かに、当落を知るならサイトが一番早い。でも、今ここで?
「いえ、大丈夫です。帰ってから確認します」
 私の返事に、成瀬さんは「でも……」と心配そうな顔をする。
「もし落選してたら、家で一人で落ち込むことになりますよ。あ、勝手に一人暮らしだと思って言っちゃいましたけど」
「まぁ、一人暮らしですし、その通りですけど」
 確かに、当落確認には勇気がいる。結果が悪ければ、かなり凹む。私はScorpio(スコルピオ)に会えることだけを心の支えに、日々を生きているのだから。
「でしょ? 寂しいじゃないですか。だから今、確認しちゃいましょう! もしダメでも、俺がやけ酒に付き合います。今日はフリーなんで、何時間でも」
 イケメンの笑顔は万病に効く……なんて、くだらないことを考えながら、私はまた苦笑いした。
 本当に彼はお人好しだ。会ったばかりの私を、こんなに気遣ってくれるなんて。
 ここまで言ってくれるのに、意固地に断るのもどうかと思い、私は鞄からスマホを取り出した。ファンクラブのサイトを開き、IDとパスワードを入力する。表示されたインフォメーションの中から、ライブ情報のページを開いた。
 心臓が痛いほどバクバクしている。緊張が押し寄せ、手が震える。結果は分かっているはずなのに、確認するのが怖い。
 思わず隣の成瀬さんを見る。彼は何も言わず、優しい笑顔で見守ってくれていた。
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