私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
「〝お戯れ〟にはお応え出来ません」
「やあ。待っていたよ」
謁見の間に入るなり、玉座に腰を下ろしていたアレクシス王太子殿下は立ち上がった。
「お待たせいたしました」
宰相は退出したようだが、衛兵たちは広間の端にずらりと並んでいた。
「では、デートに出かけようか」
優雅に微笑みながら、王太子殿下が私に手を差し伸べる。それにしても、整った顔立ちだ。男らしくて、それでいて上品な。
少しためらい、私はその手を取らずに声を張って返答した。
「お待ちください」
王太子殿下は、驚いたように私を見詰めた。赤い瞳が、ゆっくりと瞬かれる。
「デート……ということであれば、私はご一緒できません」
衛兵たちがざわめく。無理もない。正面切って、王太子殿下の命令を拒んだのだ。
「率直に申し上げます、アレクシス王太子殿下。あなたはなぜ、我が団を王属騎士団としてお迎えになったのですか?」
「……美しいひとが、女だてらに高名な騎士団を率いていると聞いたから……かな」
一瞬考え込むような様子を見せたあと、王太子殿下はゆっくりと言った。口ぶりも、表情も、少し物憂げな色香を漂わせて。
やはり。やはり、というか、そんなことが許されるのか。