私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
「よくも、オレのヴィオラに」
数日後。謁見の間には、アレクシス殿下が呼んだ方々が勢揃いしていた。
王と王妃は壇上の玉座に座り、手前にアレクシス殿下が立っている。左右には宰相、大臣がかしこまった顔で控えていた。
壁際には、儀礼用の甲冑と長槍を身につけた衛兵がずらりと並んでいる。嫌でも、緊張は高まった。
玉座の奥には、あの〝力の萌芽〟も相変わらずある。アレクシス殿下が幼い頃、言葉にもできない悲しみをぶつけるしかなかった名残り。
エルディシア公爵が、アレクシス殿下と向かい合って立っている。伴っている娘のセリーヌ嬢は、緊張したように父の背中を見つめていた。
今日のセリーヌ嬢は、ひときわ美しい。ごく淡い水色のドレスはたっぷりと裾が長く、蜜のような長い金髪は真珠を連ねたヘッドドレスに包まれている。
私は一歩逸れたところに、居心地悪く控えていた。王太子殿下から直々に同席するようにとの命令だったが、場違いな気がしてならない。
アレクシス殿下は、漆黒の礼装に身を包んでいる。肩章と袖口に施された金糸の刺繍も、真紅の裏地が覗く黒いマントも、王族の格を感じさせた。
改めて、私はこんな方とお近づきになったのか——と、ますます後ろめたく思ったとき、殿下がちらりと私を見た。
ほんの微かに、小さく頷いてくれる。揺るぎない意志を宿した、紅く静かに燃える瞳。私は、ただ眼差しを返した。
「エルディシア公爵」
アレクシス殿下が、静かに声をかける。いつもの表面的な愛想の良さはなりをひそめているが、公爵が気づいた様子はない。