私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

「大丈夫だ、この人となら」


 謁見の間には、大勢の人が詰めかけていた。
 
 私は仕立てたばかりのドレスに身を包み、緊張気味に隣にいる人を見上げる。
 
 アレクシス——私の夫となる人は、正装に身を包み、よそ行きの澄ました顔をしていた。 
 真紅のマントに、小振りな肩章がついた黒の礼装上着。細身の黒いズボンに、磨き上げられた黒革の長靴。堂々たる姿だ。
 
 私と目が合うと、大丈夫だと言うように微笑んでくれた。
 
 アレクシスの誕生祭、そして婚約発表の式典の始まりだ。
 
 謁見の間の両端には衛兵がずらりと並んでいるし、楽団は静かに待機している。そして前の方からは、王侯貴族が詰めかけていた。
 
 玉座には王が、隣には王妃が座り、一段下にアレクシスが堂々と立っている。私はそのさらに一段下座にいた。
 
 私が纏っている象牙色のドレスはたっぷりと長い裾で、鮮やかな青の刺繍が施されている。
 
 宰相が一歩進み出て、エヘンと咳払いをする。そして、仰々しく祝辞を挙げ始めた。
 
「本日は、アレクシス・ヴァルスタイン王太子殿下の御生誕を祝う善き日として、皆様をここにお迎えでき……」
 
 私は何気なく玉座の辺りに視線をやり——ふと、あることに気がついた。
 
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