私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
 
 あの森ではいつも、戦いごっこに興じる子供みたいにふたりともムキになってしまうのだ。きっと、栄養補給が必要になる。
 
 アレクシスが馬を駆り始めると、夜の街が後ろにどんどん流れて行った。街道を行き来する人々が、その勢いに驚いている。
 
 城では今ごろ、贅を尽くしたご馳走が振る舞われ始めた頃だろう。お酒も甘味も、溢れるように供されているに違いない。
 
 街を駆け抜けて通り過ぎる風が、私とアレクシスの髪をなびかせる。人々の気配が、遠ざかっていく。私たちが風になったようだ。私は、声をあげて笑った。
 
 これから私の歩む人生は、今ふたりで駆け抜けている逃避行のように痛快にはいかないかもしれない。
 
 王族としても、騎士としても生きるのは大変だろう。様々な制約や、重い責任がつきまとうことになる。それでも私は、アレクシスの隣にいたい。
 
 大丈夫だ、この人となら。
 
 馬が駆ける。夫になる人が、楽しそうに胸を張る。私は彼にぎゅっと抱きつく。森に向かってひた走る影の上で、秋の夜空にいっぱいの星が光っていた。
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