私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
「鎧と、服を脱いで欲しい」
「よしッ! とりあえず今日のところは、基礎トレしまくっとけばいいっスか!?」
白百合騎士団の副団長、リーネ・クロイツェルはそう言うなり、愛用の大剣でぶんぶんと素振りを始めた。
「そうするしかないな。私も、しばらくは事務仕事の方が多いかもしれない」
入道雲が浮かぶ空を見上げながら、私は深呼吸した。よく晴れた、気持ちのいい夏の終わりの日だ。
先日、アレクシス殿下からは
「ゆくゆくは、王族の移送護衛や式典での護衛を任せたい」
と、ざっくりとした方針は伺っていた。
とはいえ、そんなにすぐに王侯貴族の命を預かる仕事ができるわけではない。
まずはともかくこの城に馴染み、それから適材適所でふさわしい仕事をしてもらおう。そんな風に聞いていた。
「まあいいじゃないっスか。アタシは、ヴィオラさまと一緒に働けたらなんでもいいし」
男爵家の娘、リーネは、私が初めて出会った騎士志望の少女だった。
両親が平民出身だったリーネは、伯爵家のお嬢さま育ちだった私に広い世界を教えてくれた。