私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

「少し失望したかもしれません」


 数日後、王城ではセリーヌ嬢が主催するサロンが開催された。
 
 中庭にほど近い応接間に、貴族の令嬢や知識人たちが集まってくる。
 
 広々とした応接間にはいくつもの円卓が置かれ、それぞれ和やかに人が集まっていた。
 
「意外と楽しそうっスね。サロンなんていうから、どんな堅っ苦しいのかと思ったら」
 
 騎士の甲冑に身を包んだリーネが、隣に立つ私にこっそりと言う。
 
 確かに、このサロンは趣味がよいと私も思う。令嬢たちはそれぞれに刺繍道具や図案集を持ち寄っていて、楽しそうだ。
 
「私語は慎め。護衛任務の最中だぞ」
 
 いちおう注意はするが、私もウキウキした気持ちが声に出てしまっている。
 
 白百合騎士団、はじめての任務だ。形ばかりの護衛とはいえ、ついに王宮での仕事に就いている。喜ばしいことだ。
 
「はあい」
 
 リーネはお行儀よく返事をしながら、ウェイターが運んでいるお茶や菓子を興味深そうに眺めている。
 
 一番大きな円卓には、アレクシス殿下がついていた。周りを、着飾った令嬢に囲まれている。令嬢たちは、口々に殿下を誉めそやしていた。
 
 持ってきた裁縫道具や、上等な布はそっちのけだ。とにかく、アレクシス殿下の関心を引きたくてたまらないらしい。
 
「お聞きになって? アレクシス王太子殿下の武勇伝!」
 
「ええ。なんでも、たった十七歳のときに、凶暴な魔獣の群れを討伐なさったとか」
 
「都に現れた、恐ろしい魔獣の群れ。なんと、殿下おひとりで、いっせいに退治してしまわれたんでしょう?」
 
「他の騎士様が三十人束になっても敵わなかった群れを、たったお一人で!」
 
「まあ、なんてお強いのかしら……」
 
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