私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません

「幼い頃のあなたを、抱きしめてあげたい」


 城に来てから、あっという間に時は過ぎていった。
 
 もうすっかり冷え込んで、冬の真っ最中だ。演習場の木々も寒そうに枝を震わせている。
 
 あれから私は、城で充実した日々を送っていた。
 
 セリーヌ嬢が主催するサロンの護衛は、あれから毎回勤めている。護衛とは名ばかりだが、交わされる会話を聴いているのは楽しい。
 
 セリーヌ嬢は本当に心の綺麗な令嬢で、会えば会うほどどんどん彼女のことを好きになった。
 
 他の仕事内容といえば、派手なものも地味なものもあった。
 
 城に配属する精鋭の団員たちを束ねて、訓練をする。城の行事で、護衛を務める。城の中で力仕事があれば、それを手伝うこともあった。
 
 中でも、最も重要な仕事が——
 
「団長! ヴィオラ団長! 殿下がいらっちゃったわ!」
 
 訓練中の団員たちが、にわかにキャーキャーと騒ぎ始める。
 
 振り返ると、演習場で訓練をする私たちの方に向かって、アレクシス殿下が颯爽と歩いて来るところだった。
 
 寒空に熱を灯すような、溢れる笑顔だ。乙女ばかりの団員たちひとりひとりに微笑みかけるたびに、黄色い歓声があがる。
 
「お邪魔するよ、お嬢さんたち。今日も、キミたちの麗しき団長をお借りしたい」
 
 アレクシス殿下が軽やかに宣言すると、団員たちからは感嘆するような溜め息が漏れた。
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