私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
「さようなら、王太子殿下」
麗しい春の盛り。城の大広間は、溢れんばかりの花飾りに彩られていた。いよいよ、舞踏会の開催だ。
各地から、大勢の貴族たちが詰めかけている。色とりどりのドレスを着た令嬢、礼服に身を包んだ貴公子たち。
うきうきしているのは、社交界の人々だけではない。配膳したり、掃除したりする使用人たちも楽しそうだ。
「うわ〜! ヴィオラさま、キレイすぎっス! さすがウチの団長、強いだけじゃなくてこんなにおキレイだったなんて!」
控えの間についてきたリーネが、私の周りをチョロチョロしてはしゃいでいた。しかし、なぜこんなに嬉しそうなのだろう。
私に用意されたのは、銀糸で細かな刺繍が施された真紅のドレスだった。深い赤がきらめく糸に飾られて、強さと上品さが両立した素晴らしい品だ。
「すごーい。ヴィオラさまにぴったりっス! 手袋と袖の間にチラ見えする腕もステキ……」
「おいっ、余計なことを言うなっ」
恥ずかしくなって言い返すが、リーネはケラケラ笑って楽しそうだ。
社交界の令嬢で、こんなに腕の筋肉が発達している者なんていない。そう太いわけではないが、たおやかな箱入り娘とはやはり違う。
「ヘアスタイルはカワイイっスね! なんていうんスか、巻き髪? ヴィオラさまがこんな風にしてるのは初めて見たけど、よく似合ってる!」
リーネは私の髪を見て、嬉しそうに騒いだ。長い赤髪は優雅なウェーブをかけて、後ろに流している。星のような髪飾りも留めた。
いつもは動きやすいようにひとつにまとめているので、本当に落ち着かない。