私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
「お前以外に、オレはなにも要らない」
舞踏会が終わり、以前通りの日常が始まった。あれから二ヶ月あまりが経ち、庭園にはもう夏の花が咲き誇っている。
私の仕事は、少し様変わりした。
アレクシス殿下とお会いする機会は、ぐっと少なくなってしまったのだ。私にとっては好都合だ。
住む部屋はほど近くなっていたが、私は徹底的に殿下と二人で会うのを避けた。今までになく距離は近いのに、遠い遠い場所にいるようだった。
先日の王太子殿下襲撃事件は、まだ解決していない。アレクシス殿下がふらっと街に出掛けることはなくなったので、必然的に私がお供することもなくなる。
調査チームは動いているようだが、あまり力を入れて捜査している様子はない。
というよりも、なにかともたついている様子だった。チームの連携が取れていなかったり、指揮する役人がなかなか捜査の許可を出さなかったり。
確かにあれ以来つぎの襲撃はないし、犯人に害意は見られなかった。とはいえ、こんなにのんびりしていていいのだろうか。
ただし、城の警備は増強した。街の見回りや、衛兵の訓練も熱心に行われるようになっている。
アレクシス殿下と会う機会が減ったのは、本当に好都合だった。
もちろん、アレクシス殿下を避けるのは辛い。すれ違うたびに、なにか言いたげな殿下の傷ついたような顔が目の端に映る。
それを見ないふりをして、私は以前の通りの〝お堅い女騎士〟を演じるのだ。