私は剣に身を捧げた女。王太子殿下の求愛は、お受け出来ません
「殿下、なぜあなたが泣きそうなんですか」
そのときだった。
爆発音が轟き、この昼日中に閃光が走る。私たちが座る草のすぐ隣に、見覚えのある魔道具が炸裂していた。
真っ黒な煙が、草原を塗り潰すように広がっている。その向こうの太い木の影から、ちらりと人影が見えた。
間違いない! あのときの襲撃者だ!
「待て! 逃すものか!」
動揺を抑えられずに、初動が遅れた。立ちあがろうとしたが、体に上手く力が入らない。それに、今は丸腰であることに気がついた。
「ヴィオラ! 危な……」
アレクシス殿下の焦った声が、背中に飛んでくる。その瞬間、私の視界は真っ白になった。
「っ、ああっ……!」
顎と頬の辺りに、激しい痛みが走る。襲撃者が投げた魔道具が、私の顔の近くで炸裂したのだ。
怖い。恐ろしい。もし犯人が、今度はアレクシス殿下の命を狙うつもりだったら……!
二度目の攻撃に、身体はひるんでしまいそうになる。しかしそれ以上に、強い気持ちが私を奮い立たせた。
絶対に、アレクシス殿下を傷つけさせはしない。
よろけながらも立ち上がった瞬間、私の肩に大きな手が置かれた。
「下がっていろ」
不思議に静かな声にドキッとして、思わず振り返る。
アレクシス殿下が、まったくの別人のような面持ちで立っていた。