人喰い屋敷
僕の小学校へと向かう道の途中に「人喰(ひとく)い屋敷」と呼ばれる廃墟があった。

なんでもその昔、殺人事件があったらしい。

五人家族で暮らしていて、お父さんが単身赴任中にお母さんが育児ノイローゼになっちゃって、三つ子を殺して食べちゃったんだって。

「えーっ! 俺が知っている話と違うなぁ。アソコは幽霊屋敷で、引きこもりの大学生がお父さんとお母さんを殺して自殺して……それ以来出るって話だぜ」

「私が知っている話とも違うわ。老夫婦がすんでいて、老老介護でつかれた旦那さんが奥さんを締め殺して、奥さんが化て出るって聞いたけれど」

三人とも聞いた話が違う。

これは一体どうゆう事だろう。

「じゃあさ、放課後に行って確かめてみようぜ!」

「賛成! 現れた幽霊の年齢で誰の話が本当かわかるものね!」

僕は怖いので嫌だと言ったが、無理やり二人に引っ張られて廃墟の前まで来てしまった……。

元は白かったであろう、汚れて灰色になった壁、蔦の這う窓、崩れてひらきっぱなしの玄関……。

ダメ! 無理! 絶対何か居る……!!

「言い出しっぺだろ」

とか

「びびってるの?」

とか煽られて、玄関の前まで押しやられても僕は頑なに入らなかった。

「お前が嫌なら俺たちだけで入る?」

「そうね、面白そう」

僕は必死になって止めた、ダメだよ! 幽霊じゃなくとも虫とか、不法侵入者とかがいるかもよ……!! 絶対やめた方がいいって!!

あまりに必死に訴えたせいか、二人とも白けてしまって「じゃあ、また今度」という話におちついた。

僕たちが廃墟に背を向けた瞬間、ポカリと開いた玄関の暗がりから声が聞こえた。



 ──ちぇっ。あと少しだったのに。


……………………………………………………………………………………

【解説】

「人喰い屋敷」とは、怖い噂で子供達を誘き寄せて喰べてしまう、化け物屋敷の事でした。

この世には幽霊の他にも怖いモノがたくさんあるのですね。

変な噂、変な人、変な家には近づかないようにしましょう。
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