金貨、拾いました。〜凶悪事件の犯人とは〜

プロローグ


 ――景気が良くないなぁ。

 俺は一人、そんなことを心の中で思う。

 侯爵家の次男に産まれ、長男のスペアとして領地に残される運命。
 婚約者は領地の有力な人物。
 三年後、何も無かったら結婚することになっている。
 今は、ずっと家の手伝い。
 我がベルゼルク領は、侯爵家の中でもかなり大きい領地を持ち、それゆえにお金にも多少余裕がある。
 だから、手伝ったらその対価としてお金がもらえるわけだ。

 ただ……
 何も使いたいと思えることがない。
 服なんて必要以上いらないし、必要になったら母上が買ってくれる。
 勉強道具も必要経費として父上が買ってくれる。
 自分で使うとしたら嗜好品ということになるのだが……
 その中に、興味を引くものが、ない。

 何だかんだため込んでいるお金は白金貨三枚にも及ぶ。
 お金には、小銅貨、中銅貨、大銅貨、小銀貨、中銀貨、大銀貨、小金貨、中金貨、大金貨、白金貨があり、それぞれ十枚で次の金貨だ。
 つまり、白金貨三十枚とは、小銅貨三十億枚ということだ。
 小さいときから手伝いをしてきたおかげだろう。
 ただ、それだけではない。
 俺が手伝っているのは「水晶」を扱うことだ。
 市井では占い師と呼ばれたりもするやつである。
 それは広めの我が領地でも俺を含めて三人しかおらず、それ故忙しく、それ故たくさんのお金をもらえるわけだ。

 どうにかしてこのお金を還元せねば……

 焦っているのには理由がある。
 最近、父上が何か言いたげに俺の方を見てくると感じることが多い。
 邪推かもしれないけれど、まさかこれだったりしないよな……? 不景気だから可能性は高そうだけど……
 だけど、お金を使えと急かされても、どうしようもない。
 いや、言われてするよりは言われる前にしたほうがいい。

 それだったら絞り出さねば。

 俺は今日、初めて真剣に、お金を経済に還元する方法を考えた。

 夢を見た。
 隣には同い年くらいの少女がいて、二人で生き物を倒していく。そして、その後にドロップしたものを拾っていくという夢。

 全く設定が分からない。
 ドロップ? 夢では受け入れてしまったが、どういうものだ? 生き物を倒したら死骸が残るだけだろう?
 だが、夢には何かしら意味はあるはず……

 そう考えて気付いた。
 この夢が教えてくれたのは、「拾う」だ! と。

 昨日考えてたお金に対する解決策。
 お金を使えないのなら、拾わせればいいじゃないか!
 ……ただ拾わせるだけじゃあもったいないなぁ。せっかくだし、そのお金をどんなことに使うか見てみたいなぁ。
 ……それじゃあ、お金は観察代だと言うことにして、水晶で何に使ったかを覗かせてもらおう!

 そこから、しばらく考えて、ルールを決めた。

 拾わせるのは大金貨。
 三十人に拾ってもらう。……もしかしたらまた手伝いによって増えるかもしれないけれど。
 はじめに拾った人を一週間監視する。

 とりあえずこんなものだろうか?

 そして、俺は領地の地図を取り出し、小石をその上に投げた。
 落ちた場所に、大金貨を置いて、拾ってもらう。

 置く場所は……ここか。

 そして、俺は思いを馳せる。
 一体どんな人が拾い、どんなふうに使ってくれるんだろう、と。

 親孝行のために使ってくれたら嬉しいな。
 貧しい子供に拾ってもらえたら、その子たちの助けになるかもしれない。
 冒険者の人がもし拾ったら……元手になってくれるのかな。

 そんな明るい未来を期待し、俺は明日、早速一枚目の金貨を置きに行くことに決めた。


 このときの俺はまだ、
 まさかこの遊びがとある事件の発覚とその犯人を教えてくれるなんて、
 その犯人が極悪人で、見つけた俺が表彰される自体になるなんて、
 それと「水晶」を使えることが合わさって、新たな俺を初代当主とする貴族家ができることになるなんて、
 ーーそんなことは夢にも思っていなかった。
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