海姫物語
いつものようにニッコリと微笑んでみるけれど自分の頬が引きつっていることに気がついてすぐに笑顔を引っ込めた。
この施設内で四六時中一緒にいる自分の母親をごまかすことなんてできないと知っている。
「またエリクと喧嘩でもした?」
隣に腰をおろして聞いてくる母親に軽く頷いてみせた。
喧嘩とは少し違うかもしれないけれど、そういうことにしておいた方が楽だった。
「長く一緒にいると喧嘩くらいするわよね」
母親の細い腕が姫奈の肩を抱き寄せる。
姫奈はそのまま母親の肩に自分の頭をあずける格好になった。
互いの体温が重なり合ってホッとする。
同じ柔軟剤の匂いがあたりにふわりと立ち上った。
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