海姫物語
「それは違う! 人工的なのは呼吸器だけ!」
姫奈は思わず叫んでいた。
自分のすべてが作り物だと言われた気がして、言い返さずにはいられなかった。
「いいか? 俺がこのボタンを押せばすぐにでも今の映像が生配信される。全国民に見られることになる。そうなればこの施設もあんたらの研究も台無しになる」
大輝がスマホを掲げて言う。
ふたりの父親はなにも言わずにそれに耳を傾けた。
すぐにでも奪い取ることができそうなのにそうしないのは、大輝の指がボタンに当たってしまわないようにだろう。
「それが嫌なら……姫奈ちゃん、こっちへ」
手招きされた姫奈がビクリと体を震わせる。
< 90 / 136 >

この作品をシェア

pagetop