氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
そのとき、受付の方で電話が鳴った。
何度かのやり取りのあと、受付の女性が慌てた様子でこちらへ来た。

「橘さん」

「どうしたの」

「藤堂さんが、救急搬送されたそうです」

橘さんの顔色が変わった。

「藤堂さんって……今朝、訪問予定だった?」

「はい。体調が急変して、ご家族が救急車を」

私の指先が冷たくなった。

藤堂。
白峰メディカルケアの関係者か。
患者か。
次の被害者なのか。

「搬送先は」

私が聞くと、受付の女性が震える声で病院名を告げた。

沢渡先生はすでに動いていた。
コートの裾が揺れる。
その横顔は、氷のように冷静だった。

でも、私は知っている。
この先に、生きている人間の血があるかもしれないことを。
処置室の赤い現実が、彼を揺らすかもしれないことを。

それでも、沢渡先生は足を止めなかった。

私も後を追う。

「先生、無理は――」

言いかけた私を、沢渡先生が振り返った。

その目は冷たい。
けれど、逃げてはいなかった。

「行くぞ、今井刑事」
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