氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
聴取を終えて外へ出ると、空はさらに暗くなっていた。

「必ず、は軽く言うな」

来ると思った。

私は拳を握る。

「軽く言ってません」

「捜査に絶対はない」

「知っています」

「なら言うな」

「じゃあ、何て言えばよかったんですか」

声が少し強くなった。

「娘さんは、自分を責めていました。お母さんの異変に気づけなかったって。何か言わなきゃ、あの人はずっと自分を責める」

「君の言葉で救われたとしても、真相が出なければまた傷つく」

「それでも、黙っていられません」

「それが君の危うさだ」

先生の言葉は静かだった。

責めるというより、診断みたいだった。

私は目を逸らした。

「わかっています」

「わかっていない」

「じゃあ、どうすればいいんですか」

先生はすぐには答えなかった。

道路の向こうで、車が水たまりを踏む音がした。

いつの間にか、細い雨が降り始めていた。

「涙を見なかったことにする必要はない」

先生は言った。

「え?」

「遺族の涙を、捜査の熱に変えるのは悪いことではない。だが、その熱で証拠を焦がすな」

冷たい言い方だった。
でも、否定ではなかった。

私の正義感を、危ないと言いながらも、全部捨てろとは言わなかった。

「先生って」

私は小さく呟いた。

「何だ」

「冷たいだけじゃないですね」

先生が眉を寄せる。

「今さらか」

「今さらです」
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