氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
署に戻ると、捜査一課のフロアはまだ明るかった。

時計は夜を指しているのに、誰も帰る気配がない。
白いボードには、被害者たちの写真と白峰メディカルケアの関係図が追加されていた。

佐伯信夫。
小沢千代。
夏目莉子。
藤堂誠司。

そして、その周囲に、白峰院長、神崎遼、橘美里の名前。

私は自分の席に資料を置くと、すぐ夏目由香さんから任意提出されたスマートフォンの確認状況を尋ねた。

「ロック、開いたぞ」

生活安全課から応援に来ていた解析担当が顔を上げる。

「妹さんが思い出したパスコードでいけた。中に、写真が何枚かある」

胸が跳ねた。

「薬剤管理画面ですか」

「たぶん。医療系の管理画面っぽい。撮影日時は夏目莉子さんが亡くなる二日前」

沢渡先生の視線が鋭くなる。

「見せてください」

解析担当が端末をこちらへ向けた。

画面に映っていたのは、白峰メディカルケアの薬剤管理システムらしきページだった。
患者名。
薬剤名。
更新履歴。
小さな文字で並ぶ記録の中に、一箇所だけ不自然な箇所がある。

睡眠導入剤の欄が作成され、その後削除された形跡がある。

作成者は管理者アカウント。
削除者も管理者アカウント。

「写真としては残っています」

解析担当が言った。

「ただ、これだけじゃ誰が削除したかまではわかりません。管理者アカウントってだけです」

私は画面を食い入るように見つめた。

「神崎さんが管理者権限を使っていたなら……」

「今井」

沢渡先生の声が、すぐ隣から落ちた。

私ははっとした。

「写真だけでは、神崎が操作したとは断定できない」

「……はい」

「管理者アカウントを使える人間は、白峰院長、神崎、橘看護主任。客観的な考えが必要だ」

「でも、夏目さんはこれを撮って、怖がっていたんですよね」

先生は画面を見たまま言った。

「この写真は、記録の不自然な変更が存在したことを示す。だが、操作した人物までは示さない」

熱を帯びかけた心が、また止められる。

以前なら、苛立ったと思う。
今も少しは悔しい。

でも、先生の言葉が必要だとわかるようになっていた。

私は深く息を吸った。

「システム会社への照会を急ぎます。端末番号とログが残っていれば、誰の端末から操作されたかわかるかもしれません」
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