氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
「今井」

低い声に、私ははっとした。

「はい」

「メッセージをもう一度確認しろ」

私はスマートフォンを開いた。

橘美里さんから届いた文面。

『神崎さんが、証拠を処分しようとしています』

『白峰メディカルケアの旧倉庫です』

『封筒と端末がまだ残っています。神崎さんが来る前に、見つけてください』

『お願いです。私ひとりでは怖いです』

文字だけを見れば、切迫している。
怯えた証言者からの、助けを求める連絡にしか見えない。

以前の私なら、きっともう走り出していた。
橘さんを守らなきゃ。
神崎さんが証拠を消す前に止めなきゃ。
その一心で、何も考えずに飛び込んでいた。

けれど今は、袖を掴んで私を止めてくれた手の感触が残っている。

強くなかった。
痛くもなかった。
ただ、私が一人で走り出さないように留めるための力。
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