麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「.....夢の中の男の子はリードだったのね」
リードネストは、モモネリアの“答え“に破顔した。
そして、落ち着いた声でモモネリアに語る。
「........俺たちは、前世では獣人の番同士だった。前世の俺と君が出会ったとき、まだ俺たちは子供だった。親に連れられて、この国に一緒に旅行に来た時、桃の云い伝えを耳にしたんだ。すでに、お互いなくてはならない存在だった俺たちは、獣人の身体能力の高さとよく利く鼻の力を存分に発揮して、季節外れになっていた桃の実をひとつもいで、この湖に来た。満月の夜に俺たちは、来世の約束を交わしたんだ」
モモネリアの中で、ストンと何か腑に落ちた。
この国に来てまた見るようになった夢
毎回同じ声で呼ばれて、振り返ればいつも同じ光景が広がっている。
あの声は、そう、前世で聞いていた愛しい番の声。
前世のリードネストの声だった。
モモネリアの涙腺が崩壊し、一気に涙が溢れ出てくる。
「.....私、すっかり忘れてて.......あり、がとう」
リードネストが、穏やかな声音で「大丈夫だ」と告げてモモネリアの背中をさする。
「......俺も忘れていた。ただ.....俺も同じ夢を見ていたんだ。モモネリアから夢の話を聞いた時びっくりしたよ、すっかり内容が同じだったから。これは何かある、と思ったが、それが何かは全くわからなかった」
「そしてさっき、ローネルとの“桃の約束“の話を聞いて、思い出した。.......前世のローネルも俺も、それぞれの番と、この国で、“桃の約束“を交わしていた。そして、それぞれの番とまた今世でも出会えた、というわけみたいだな。二人の魂を宿した、モモネリアという一人の女の子に」
「..........」
「あぁ、ただ、俺の夢には続きがあったんだ」
「......続き?」