麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
毎日膝にのせられ愛でられる日々が、嬉しくも恥ずかしくて、思わずモモネリアが「いつまで、こんな求愛行動は続くのかしら?」と漏らした時、主人をよく理解するカーヴィンは、自信満々に答えた。
「もちろん、結婚するまでですね」
そう言われて、一度は安堵した。
やはり結婚したら落ち着くのだろう、と。
その後に続く言葉を、聞くまでは。
そう、その言葉を聞いて、モモネリアはしばし絶句してしまった。
「ひとまずこの程度の求愛行動は、ですが。結婚すれば、さらに奥様への執着が強まることでしょう。それこそ、度を越した求愛行動が、“一生“続きますよ。全ては、旦那様の奥様への愛故ですから。ご覚悟下さいね」
どこかで、求愛行動を甘く見ていた。
絆が確かなものになれば、落ち着くのでは?と。
だが、逆だったのだ。
......さらにすごい求愛行動って。
少しだけ。......ほんのちょっぴりだけ。.......末恐ろしいと思ってしまったのは、リードネストには内緒だ。
「.......あぁ、早く結婚したい。やっと、お前の身も心も、俺のものだ。結婚したら、毎日愛して、愛して、愛するからな。嫌になるほど、身体にも心にも、俺を刻んでやる。楽しみにしてろ」
ニタリと妖しく笑う婚約者を見遣って、小さく息を吐く。
将来享受するであろう、今よりさらにパワーアップした、とてつもなく重い愛に、想像をめぐらせる。
愛する人がいて、親友がいて、あたたかな使用人たちに囲まれて。
毎日全力で溺愛されて。
自分の好きなことができて。
明日、リードネストとモモネリアは家族になる。
「モモネリア?何考えてるの?........俺のことだけ考えて?」
「ふふ、わかってる。.......愛してるわ、リード」
「.......愛してるよ、俺のモモネリア。......可愛い、可愛い、俺だけのお姫様」
ピクピクと頭の上で動く三角の耳、ふわふわの揺れる柔らかな尻尾がモモネリアの小さな手を撫でる。
攫われた桃の少女は、狼獣人の番のもとで、深い愛を手に入れた。
彼女は、今、とてもとても..........幸せだ。
【完】


