麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜


「........モモネリアの唇は、柔らかで甘いな。もっと味わいたくて、クセになる」


 至近距離で視線がぶつかったリードネストが、低く響く声で言った。


「..........慣れてる」


 モモネリアは唇を突き出して、拗ねた顔で視線を下げる。


「ん?」


「.......何だか、リード手慣れてるわ。........キス、したことあるの?」


 ちらっとリードネストを見て、ボソボソと尋ねるモモネリアに、一瞬遅れて彼は笑い出す。

 尻尾は、楽しげに弧を描いて揺れている。


「......モモネリアが初めてだ」


 パッと勢いよく顔をあげて、信じられないという風に眉間に皺を寄せるモモネリア。


 彼はニコニコ上機嫌に、愛しい姫を見つめている。


「......本当?」


「あぁ、本当。お前も知ってるだろ?俺は狼獣人だ。獣人でも、一夫多妻制の種族ももちろんいるが.......俺たち狼獣人は生涯番だけを愛する。番以外に、心が動かないんだ。だから、番と出会えなければ、生涯誰とも寄り添わず一人で死んでいく。俺だって、ずっと一人で生きていくんだろうと思っていた。モモネリアと出会うまでは。.......俺は、本当に幸運だ。俺にとってこの世でたった一人の存在に.......モモネリアに出会えたんだから。俺には、今までもこれからもお前だけだ。........信じてくれた?」


「.........うん。リード........ありがとう」



 いつも愛してくれて。

 たくさんの自信をくれて。

 私がこの世に存在している意味を教えてくれて。

 居場所をくれて。

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