麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「気に入ったみたいで良かった。可愛いモモネリアに見せてあげたかったんだ」
モモネリアは少し冷静になり、自分が興奮しすぎたと気づいて恥ずかしくなってきたのだろう。
カァっと更に頬を染め、リードネストから視線を外した。
「.......ありがとう。私、お花畑なんて見たの初めてよ」
祖国にいた頃は、家事とお店のための買い出しや手伝いばかりで、自分のために使う時間もなかった。家族は、モモネリアを愛しているわけではなかったから、家族で出かけることもない。
時折楽しげに出かけるのは、両親と姉のガーネットの三人だけで、モモネリアは留守番を言いつけられていた。
当然、モモネリアにとって花畑なんてお話の世界の話で、こんなに幻想的な素晴らしい景色だと初めて知ったのである。
それを聞いたリードネストは、一瞬眉間に皺を寄せ怒りを堪えるような、苦しげで切なげな顔をして、すぐに元の微笑みをたたえた。
モモネリアは、リードネストにまだ家族の話はしていない。
いつか話さなくてはならないと思いながら、家族にも家族と思われない自分を知られるのが恥ずかしくて、情けなくて、自分の孤独を思い知りそうで、決心がつかずにいる。
ただ、モモネリアの発言や態度から何か察しているらしく、リードネストはモモネリアが少し何かを漏らすとそんな顔を見せるようになった。
詳しくはわかっていないはずなのに、まるで過去に寄り添ってくれているみたいで、モモネリアはそれが嬉しかった。
「そうか。モモネリアが望むなら、もっと色々なものを見に行こう。お前と一緒にたくさんの場所に行くのが俺の夢だ。仕事柄、こういう外国にもよく来る。これからは、モモネリアも一緒に行こう。モモネリアと離れるのは俺が寂しくて耐えられないからな」
そう言って頭を優しく撫でる。