ハウスクリーニング山代には休みが無い
那月さんは深刻そうな顔付きと重そうな足取りで今にも倒れそうにふらふら俺達の方に歩いて来ると静かに口を開いた。

「……もこちゃん…終わりました」

!!?

那月さんの一言に俺達一家と風呂本兄弟はモノクロに凍り付いた。

「……お…終わっ…た?」

あまりの衝撃に俺は生まれて初めて本気で愕然としその場にガクッと膝から崩れ落ちた。

「風太郎!!」

「風ちゃんっ!!」

「「フー太郎っ!!」」

全員がしゃがんで俺の周りに集まってきた。

「…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だっ!!もこが…嫌だっ、俺は信じないっ!信じないぞ!!…もこはもこはまだうちに来て5カ月くらいしか経ってないんだ!あいつまだパピーなんだぞ!?0歳なんだぞ!?確かにお転婆で気まぐれで食い意地だけ立派に大人でたまにしか呼んでも来ないし、何回教えてもあちこちでウンコするし、バウの人形に喧嘩売って負けると八つ当たりで親父に噛み付くし、使用中の風呂も覗き見して人がトイレに行けばトイレ前で唸りながら待ってるし、朝は早く起きて遊べって髪の毛噛んでくるとんでもないパピーだけど、まだまだやんちゃ盛りなめんこいパピーなんだよ!!やっと最近おやつのために嫌々お手するようになったばっかなのに俺より早く終わるなんて早過ぎんだろ、バーロー!!うわぁあぁーっ、もこーーーっ!!!」

拳で床を叩きながら俺は泣き叫んだ。

親父達も皆泣いていた。

「初めてもこを見た時から昔から知ってる奴にあったみたいな感じがしたくらいもことの出逢いは運命の出逢いだったんだっ、クソがっ!もこーーーっ!!」

「クゥン、クゥン」

「うわぁ〜〜〜………え?クゥン?」

聞き覚えのある声に顔を上げると早く帰らせろ!みたいに山形先生の腕の中でサマーカットになったもこが大暴れしていた。

これは夢?

ぺろぺろと俺の顔を舐めるこのもこは偽物?

ははっ、きっとそうだ。だってうちのもこはもっと毛がもふもふしてるもん。はは、はははっ…ここは御伽の国〜♪ルルル〜ルンルン、ルンルン、ルン…ルン…。

「いやぁ、初めての“トリミング”だからもこよりこっちが緊張したな母さん!」

「えぇ、本当!私もう涙が出るくらいドキドキしちゃいましたわ!」

「あらあら可愛くしてもらえて良かったですね、もこ」

「もこちー、写真撮るからこっち向いて〜♪ついでに山形先生も一緒にはいパシャリ♪」

イエイと山形先生が笑顔でピースした。
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