仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「気になさらないでください。事情が事情ですし、偽装だと疑われて社長にご迷惑をかけるよりはずっといいです」
今さら、「実は……」なんて切り出せるわけもなく、貼り付けた笑顔でもっともらしいことを言ってみせる。
そのあとで胸がずきずきと痛んだ。
ここから先は契約外の感情だから言えない。言ってはだめ……なのに。
「それに……正直に言えば、一緒に暮らすと聞いて、ほっとした部分もあるんです。贅沢な悩みなのですが、この広い部屋でひとり過ごしていると……少し、寂しくて」
ああ、私は何を言っているんだろう。
困らせてしまうのに。面倒くさい女になってしまうのに。
ここまできたら引き返すこともできず、握りしめた拳を見つめながら必死に言葉を探した。
「だから……この一週間、社長に会えるわずかな時間が嬉しかったと言いますか……次はいつ帰ってきてくださるんだろう、などと、考えてしまって……」
「…………」
沈黙が流れて泣きたくなる。
失敗した。伝えるんじゃなかった。
社長がどんな顔をしているのか確かめるのが怖い。
「……困りましたね」
やがて落ちてきた低い声に、心臓が冷たく跳ねる。