仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
そう言って、彼がゆっくりと立ち上がった。

生まれた距離をもどかしく感じて、思わずその姿を追いかける。

「あっ……」

彼のトレーナーの裾を掴みそうになったところで、はっと我に返った。


「……えっと……、おやすみなさい、統悟さん」

顔が真っ赤になるのを感じながらなんとか言い切ると、ドアノブに手を掛けていた彼の動きがぴたりと止まる。


「……やっぱり今夜抱いてもいいですか?」

「へ?」

「─────冗談だよ。おやすみ、理優」


最後に妖しく笑ってから、彼は部屋を出ていった。


私はその場に立ち尽くす。

……な。なに、今の……。

本当にいい加減にしてほしい。
私が不慣れなのを知っておきながら、こんなからかうようなことばかり……。

────『べつにからかっているつもりはありません』

なんて言っていたけれど、信じられるわけがない。

まだバクバクと暴れている心臓を、そっと押さえつける。

パーティーまでのあと一ヶ月。
私の心臓は持つのだろうか。

完璧な偽装のための練習は、まだ始まったばかりなのに……────。
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