仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「よく考えれば、名前の呼び方以前に、夫婦が敬語で話すのもおかしいですよね」
「っ、ええ、たしかにそうかもしませんね」
「徐々にでいいので外していきましょうか」
「そうですね、はい……」
「さっきから肯定しかしていないようだが?」
「……だ、……」
再び顔をのぞきこまれて、そのあまりに近さにびっくりする。
「────大丈夫じゃありません……すみません、タメ口はまだ、ちょっと……」
ついに思考回路がショートして、正直な言葉がこぼれ落ちる。
頭の中で何かが、ぷしゅーと音を立ててしぼんでいった。
体はすっかりのぼせ上がっていて、ソファの背もたれがなかったらすぐにでも後ろへ倒れてしまいそう。
「本当に、仕事のときとは別人みたいだな」
「申し訳ありません……こういうのに不慣れなもので、どうしても……」
「慣れてる、なんて言われたほうが困る。嫉妬に駆られてあなたをめちゃくちゃにしそうだ」
「え……?」
「……こういうふうに、俺が時間をかけて慣らしてやれば問題ないだろ」
……あ、そういうことか。あまりに演技派でついどきっとしてしまった。