仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
他にはというと、せいぜい「お疲れ様です」程度のやり取りくらいで。
こんなの、職場の廊下ですれ違っただけでもできてしまう。
「それはそれは……。しかしまあ、夫婦としての同居は統悟様からのご提案でしょう? 彼もこのままでいいとは思っていないはずです。また近いうちに、きっとなにかアクションがありますよ」
「……そうでしょうか」
「ええ。何はともあれ、応援していますよ。パーティーにはわたくしも参加いたしますので、おふたりの特訓の成果が楽しみですな」
そう言って明るく笑いながら、柳さんはスタッフルームを出ていった。
まさか柳さんが同居の成行きまで知っていたなんて……。
クラルテの前は某高級ホテルのチーフだったと聞くし、どうやら夜見家とも親しい関係にあるようだし。
いったい何者なんだろう……とますます気になってしまった。
それはさておき。
完璧に偽装するための夫婦生活は、はっきり言って前途多難だ。
いい点といえば、必要以上に彼のことを考えずに済むこと。
この結婚はやっぱりただの契約だと割り切れる。
────そう思っていた。
この日の夜、玄関で彼がに出迎えられるまでは。