仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「この服で大丈夫かな……」
自室の鏡の前で、私は何度目かわからないため息をついた。
クローゼットから引っ張り出した服が、ベッドの上に何着も散らばっている。
─────遡ること一時間ほど前の、十四時。
仕事から突然帰ってきた統悟さんに『今から少し出かけましょうか』と誘われたのだ。
話を聞けば、今度の社交パーティーで私が着るためのドレスを買いに行くのだという。
本来、彼のような身分の人が、わざわざ店に足を運ぶことはあまりないはずだ。
贔屓にしている外商を部屋に呼べば済む話……なのだけれど。
『夫婦として、まだ人前に出たことはなかったな……と思いまして』
彼のそのセリフを聞いて、私はあっさり納得した。
つまり、パーティー予行練習の実践編、といったところだ。
それにしても、ドレスは盲点だった。
偽装がバレないよう、いかに妻らしく振る舞うか。
そんな心配ばかりに気を取られていて、自分が何を着て彼の隣に立つべきか、ちっとも頭が回っていなかった。
言うまでもなく、彼の隣に─────“夜見統悟”の隣に並ぶのに相応しいドレスなんて、私は一着も持ち合わせていない。
というか、それ以前の問題だった。
私は今、必死に、ドレスを買いに行くための服を選んでいる。
……なかなか決めきれないのは、訓練の一貫だとしても、私にとっては好きな人との初めてのデートになるからだ。
「やっぱり……地味すぎる、かも……」