仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
呼吸が乱れて、心も乱れて、苦しいのに。
それでも精一杯応えようとしてしまうのは、やっぱり、この人が好きだからだと思う。
「……もう一回呼んで」
「……え……」
「俺の名前……呼んで、理優」
好きだから、名前を呼ばれるとうれしい。
好きだから、名前をもっと呼んでみたい。
「と……、統悟、さん……」
「……あー、ほんとにもう、お前は……」
「んんっ……」
もう境界がわからない。
呼吸も鼓動も混ざり合って、私たちの本当の関係さえもすべてが曖昧になっていく。
こわばっていたはずの体は、もうとっくに抗う力を失くしている。
やがて立っていられなくなった私を、彼がやさしく抱きとめた。
それから、私の額に自分の額をこつんと預けてくる。
「……可愛すぎるのも大概にしてください」
ため息混じり交じりの声が、ぼんやりとした意識の中に流れ込んでくる。
こんなの、本物の夫婦みたいだ。
……皮肉なほどに、よく出来すぎている。
そのせいで、頭を片隅をよぎってしまう。
この偽りの中になら、永遠に閉じ込められてもいい……なんて、ひどく愚かな考えが。