仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

「……忘れたいよ。でも、そう簡単にいかないの。私にとっては……初めて、自分から好きになった人だったから」

素直な言葉がこぼれてしまうのは、やっぱり熱のせいなのか。
言い終えると同時に、涙がじわりと浮かんだ。

堪えきらず、その一筋がつーっと頬を伝っていく。

「あれ……? ごめん、すぐ泣き止むから……」

それでも一度溢れ出した感情はなかなか止められなかった。

勤務中なのに……どうしよう……。


エントランスには幸い、五十嵐くん以外の姿はない。


「成田……大丈夫、我慢しないで。つらいなら泣いていいんだ」

そんな優しい言葉に、堰を切ったかのように次々と涙がこぼれた。

顔を覆って嗚咽を漏らす私の背中に、ふと、五十嵐くんの大きな手が置かれる。

なだめるように何度もさすられると、ゆっくりと呼吸が落ち着いていくのがわかった。


「……なあ、忘れたいなら、俺を利用すれば」

「……え?」

「……俺はお前を一人で泣かせたりしない。この先もずっと……ずっと好きだから」


顔を上げると、真剣な目が私を捉えていた。
< 194 / 209 >

この作品をシェア

pagetop