仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「……忘れたいよ。でも、そう簡単にいかないの。私にとっては……初めて、自分から好きになった人だったから」
素直な言葉がこぼれてしまうのは、やっぱり熱のせいなのか。
言い終えると同時に、涙がじわりと浮かんだ。
堪えきらず、その一筋がつーっと頬を伝っていく。
「あれ……? ごめん、すぐ泣き止むから……」
それでも一度溢れ出した感情はなかなか止められなかった。
勤務中なのに……どうしよう……。
エントランスには幸い、五十嵐くん以外の姿はない。
「成田……大丈夫、我慢しないで。つらいなら泣いていいんだ」
そんな優しい言葉に、堰を切ったかのように次々と涙がこぼれた。
顔を覆って嗚咽を漏らす私の背中に、ふと、五十嵐くんの大きな手が置かれる。
なだめるように何度もさすられると、ゆっくりと呼吸が落ち着いていくのがわかった。
「……なあ、忘れたいなら、俺を利用すれば」
「……え?」
「……俺はお前を一人で泣かせたりしない。この先もずっと……ずっと好きだから」
顔を上げると、真剣な目が私を捉えていた。