仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「……あの時は、本当にすまなかった。余裕がなくて、お前にあんな怖い思いをさせた。一生消えない傷を作ったって、ずっと後悔してた」
五十嵐くんは私の手首をそっと掴み、引き寄せるように距離を詰めた。
「でも、だからこそ、もう二度と傷つけない自信がある。お前がボロボロになってまであの男を想ってるのを見てるのが、何よりも辛い」
「五十嵐くん……」
「夜見社長の代わりでもいい。俺が救ってやるよ……」
そんな言葉が、弱り切った心に一瞬、甘く沁みかける。
けれど、すぐにぎゅうと唇を噛んだ。
この手を取れば、たしかに楽になるのかもしれない。
統悟さんを忘れ、彼との思い出をすべて捨て去って、五十嵐くんの隣で笑う日常。
それが一番正しいことのように思える。
……─────ううん、それでも。
「五十嵐くん、私は……」
涙を拭って、再び彼を見上げようとした。
その直後だった。
「───勤務中に、いったいふたりで何をしているんだ」
懐かしい声が聞こえた気がして、一瞬、呼吸が止まる。