仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~


彼──夜見統悟(よみ とうご)とは、私がコンシェルジュとして勤務するマンションの運営者であり、都市開発などを手掛ける大手不動産会社の若き社長だ。

たしか今年で二十八歳だったはず。社長に就任したのが二年前だから、現在の私と同じ歳で日本不動産業界のトップに上り詰めたと考えると恐ろしい。

さらに彼は、かの有名な旧大財閥である夜見家が率いる『夜見グループ』の会長の孫でもあるらしい。

さまざまなメディアで目にする彼はいつも高貴なスーツを身にまとい、端整な顔に隙のない笑みを浮かべ、若くして巨大な企業を率いるだけの自信と余裕を漂わせている。

まさしく、異次元。
指先の動きひとつにまで育ちの良さがにじんでいて、画面越しでも私たちとは住む世界が違うと思い知らされるのだ。


ただ、そうやって華々しく崇められる一方で、彼に深い畏怖を抱く者もまた多かった。

本社の社長室前の廊下は、社員たちの間で『処刑台への一本道』と呼ばれていて、そこに招かれた人々は皆、翌日には決まって姿を消しているんだとか……。

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