仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「成田先輩、私ついにあのルールの意味がわかったんですよ」
終業後の更衣室にて。
笹井さんから不意に投げかけられたひとことに、私は制服のボタンをはずす手を止めた。
───“あのルール”。“意味”。
頭の中に言葉を並べてみるけれど、いったい何の話なのか、すぐには思い当たらず。
そんな私に彼女は「もう先輩ったら」とでも言うようにいそいそと距離を詰めてくる。
終業後はたいてい無言でぐったりとロッカーにもたれるようにして着替えているのに、めずらしい。心なしか声も弾んでいるし。
「ほらあ、夜見社長の」
「夜見社長……」
その名前を復唱してようやく、ああ、と思い浮かんだ。
「彼と目を合わせちゃいけない、とかいう?」
「そうっ、それです!」
彼──夜見統悟とは、私がコンシェルジュとして勤務するマンションの運営者であり、都市開発などを手掛ける大手不動産会社の若き社長だ。
さらに彼は、かの有名な大財閥「夜見グループ」の会長の孫でもあるらしい。