仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
さまざまなメディアで目にする彼はいつも高貴なスーツに身をまとい、端整な顔に隙のない笑みを浮かべ、若くして巨大な企業を率いるだけの自信と余裕を漂わせている。
まさしく、異次元。
指先の動きひとつにまで育ちの良さがにじんでいて、画面越しでも私たちとは住む世界が違うとわかってしまう。
黒い筋の組織と裏でつながっているだとか、人の血が流れていない氷のような男だとか。
なにやらよくない噂も聞くけれど、それらがどこまで本当なのか、私ごときには判断のしようがなかった。
そう、私が知る“夜見社長”なんてせいぜいその程度。
数ある自身の所有物のひとつにわざわざ足を運ぶような立場ではないから、直接お目にかかったこともない。
画面の向こう側で完璧に微笑む、遠い誰かにすぎないのだ。
だから、目を合わせるなと言われても、そもそもそのような機会すらないわけで……。
「機会がないのにどうして?って思いますよね?」
思考を読んだかのようなタイミングで笹井さんに顔をのぞきこまれ、びくりとする。
「ところが、なんですよ」
更衣室には私たちふたりしかいないのに、彼女は声をひそめた。大切な秘密を、こっそり打ち明けるみたいに。
「今日、うちのマンションにいらっしゃったんです」
「……誰が?」
「夜見社長」
「え?」
まさしく、異次元。
指先の動きひとつにまで育ちの良さがにじんでいて、画面越しでも私たちとは住む世界が違うとわかってしまう。
黒い筋の組織と裏でつながっているだとか、人の血が流れていない氷のような男だとか。
なにやらよくない噂も聞くけれど、それらがどこまで本当なのか、私ごときには判断のしようがなかった。
そう、私が知る“夜見社長”なんてせいぜいその程度。
数ある自身の所有物のひとつにわざわざ足を運ぶような立場ではないから、直接お目にかかったこともない。
画面の向こう側で完璧に微笑む、遠い誰かにすぎないのだ。
だから、目を合わせるなと言われても、そもそもそのような機会すらないわけで……。
「機会がないのにどうして?って思いますよね?」
思考を読んだかのようなタイミングで笹井さんに顔をのぞきこまれ、びくりとする。
「ところが、なんですよ」
更衣室には私たちふたりしかいないのに、彼女は声をひそめた。大切な秘密を、こっそり打ち明けるみたいに。
「今日、うちのマンションにいらっしゃったんです」
「……誰が?」
「夜見社長」
「え?」