仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
──五十嵐くん。
そういえば、このあいだ自宅近くのコンビニで会って以来、なんにかとタイミングが合わずあまり話していない。
そのせいで異動の件を直接伝えられず、他の誰かの口から聞かせる形になってしまい少し申し訳ないと思う。
「ねえ成田先輩、可哀想ですよー、五十嵐さん」
「うん、私も異動については自分の口から伝えたかったんだけど……」
「そうじゃなくて。五十嵐さんて絶対先輩のこと好きなのに、急に異動って」
「え?」
ぱちぱちと瞬きをしながら彼女を見つめ返す。
「私、ここに入ってきた当初、成田先輩と五十嵐さんは付き合ってるって思い込んでたんですよね。五十嵐さんの成田先輩を見る視線が熱すぎて」
「いや、あはは。そんなわけないって」
「そんなわけありますよ。先輩、私の観察眼いつも褒めてくれるじゃないですかー、恐るべしって」
「もちろん、それは大いに信用してるけど……」
五十嵐くんが私を……なんて、やっぱり想像がつかない。
「はあ……先輩にとって私ってその程度だったんだ」
「なに言ってるの。笹井さんはこれからもずっと、私の自慢の後輩だよ」
ため息と一緒にこぼれた声に、笹井さんが得意げにふふっと笑う。
可愛い後輩の笑顔に免じて、近いうちに五十嵐くんと改めて話す時間をつくろう。