仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
──────────────
────
「成田さん、本社の社長室から……よ、夜見社長から、お電話です」
次の日。
お昼の休憩まであと三十分となったところで、管理室から戸惑いの声で内線が掛かってきた。
反射で「はい」と応えたものの、やはり聞き間違えたのではないかと、再度相手に確認をとる。
「今、夜見社長からとおっしゃいましたか?」
「ええ。……ええ、たしかに、おそらく」
たしかに、おそらく。
その不確かな言葉づかいに、おかしな話、緊張の裏でわずかな安堵をおぼえた。
よかった。
夜見社長と対峙するとコンシェルジュらしからぬ言動をとってしまうのは、私だけじゃなかった。
彼が相手だと、やはり誰しもおかしくなってしまうのだ。
心臓がぎゅう、と圧迫されるみたいに。
「……お待たせいたしました。お電話代わりました、コンシェルジュの成田でございます」
受話器を握る手に自ずと力が入る。
ああ、成田さん、と、向こう側から低い声が届いて。
「突然ですが、このあと──そうですね、今から三十分後あたり、時間はありますか?」
その一拍後、どくどくっと鼓動が乱れた。