仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~

この方が、夜見社長の秘書──。

ふさわしい、という言葉以外見つからなかった。


「初めまして。コンシェルジュの成田と申します」

一礼して、声が震えていないことを祈りながら顔を上げる。
目が合うと、彼女の目元がふっとほころんだ。


「初めまして。社長秘書の沖野鞠子です。本日はお時間をいただきありがとうございます」

「いえ。こちらこそ、お忙しい中ありがとうございます。本日は、異動についてのお打ち合わせとのことで」

「ええ。社長がぜひ事前に、と。急なお声掛けで驚かれましたよね?」


今度はいたずらっぽく目を細められてどきりとする。
彼女の声は落ち着いていながらも、私の想像よりずいぶん明るい。

あの夜見社長の秘書というからつい身構えてしまったけれど、思ったより親しみやすい人なのかもしれない。


「社長っていっつも急なんですよ。さっきだって、“成田さんに電話しておいたから今から行ってこい”って、事後報告ならぬ事後命令。ありえないですよね?」

「ええっ? そうだったんですか」

「そうなんですそうなんです。前回も秘書の私に黙って成田さんをスカウトしに……。あの日は夜に会食の予定が入っていたので大慌てでしたよお」

「……な」
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