仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
目を合わせてはいけない男
広いロビーの一角にある革張りのソファに腰を下ろしたとき、私の喉は尋常じゃないほどに乾ききっていた。

四年も働いてきた場所だ。高級ソファも、その間につつましく置かれたローテーブルも、窓際を彩る石のオブジェも、見慣れたもいいところなのに。

なんか、私の知ってる空間じゃないみたい……。

うるさいほどに響く鼓動だけが、かろうじてこの景色が現実であることを証明してくれている。

向かいのソファに座るのは、まごうことなき夜見社長だ。

大財閥「夜見グループ」の会長の孫にして、巨大資本を束ねる不動産会社「夜見アーバンクリエイトホールディングス」のトップに、若くして君臨した男。

……やっぱり、なにかの間違いじゃないのかな……?
それとも、社長本人から呼び出されるほどの重大なミスを私が犯したとか……?

ごくりと息を呑んで、おそるおそる相手を見やる。

整いすぎた容姿。隙のない笑顔。
この人を表すには、美しいという言葉だけでは足りない気がする。
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