仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
「帰り道が心配なだけであれば、初めからあなたの家まで送っています。あの執拗な男が、自宅まで追いかけて来たらどうするんですか?」
「っ、それは……────」
はっと胸を突かれる。
何を言われても断るつもりでいたのに、五十嵐くんに押さえつけられたときの恐怖を思い出すと体が冷たくなっていく。
だけど……迷惑を掛けるわけにはいかない、から。
「私は、全然……」
「“大丈夫”、なんて言葉は、今は信用できません」
すぐそばで低い声が落ちた。
やさしくて、けれど抗いようのない強い響き。
心がゆっくりと乱れる気配がする。
「知っての通りクラルテはセキュリティが厳重ですから、しばらくの間は帰らずここにいたほうがいいでしょう」
「……ですが……」
「警戒しなくても、取って食うよな真似はしませんよ」
「……っ!」
頬がかっと熱くなった。
「いえ、違っ……、べつにそんな警戒なんて……!」
「なんなら俺の部屋を貸します。好きに使ってください」
「へ?」
「俺は元々あまり帰らないので全く問題ありません」