仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
とてつもなく間抜けな声が出てしまった。
なにせ、ついさっき沖野さんとあんな話をしたばかりだったから。

『あなたに大事な話がありまして、お時間をいただきたいんです。よろしいですか?』

───大事な話。

そっか。そうだよね。
話をするために待っていてほしい。ただそれだけのこと。ヘンな意味ではなかった。当たり前だ。

「はい。もちろん大丈夫です」

『ありがとうございます。会食はなるべく早めに切り上げて帰るようにします』

「無理はなさらないでください。私は何時まででも待てますので……」

『いえ。俺が早く会いたいからですよ。形だけの結婚とはいえ今日は特別な日ですから。それでは』

「え? は、はい……失礼します」

あまりにもさらっと言われるから、反射で相槌を打つことがしかできなかった。

電話が切れたあとで、じわじわと熱がぶり返してくる。

今……、早く会いたいからって……聞こえたような。
今日は特別な日だからって……。

いくら偽装のためとはいえ、やりすぎじゃないだろうか。完璧さが逆に怖い。


「成田さん、統悟社長はなんて?」

沖野さんに顔を覗き込まれ、我に返った。

「今夜、大事な話があるから待っていてほしいとのことでした」

「今夜? 重要な取引先の方もいるので、会食かなり長引くと思うんですけど大丈夫ですか?」

「それが、会食は早めに切り上げると……」

「えっ!?」

突然の大きな声に、私までびっくりしてしまう。

「あの統悟社長が、会食を……切り上げて……?」
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