仄暗いほど重たい愛 ~偽装妻ですが、冷血御曹司は手放す気がないようです~
そんなに珍しいことなのだろうか。

「って、すみません取り乱しちゃって! ええと……それじゃあ荷解きの続きしましょうか」

「あ、はい。そうですねっ……」

いつの間にか手が止まってしまってたことに気づき、私は慌てて作業を再開した。



「──よし、こんなところですかね」

一時間後。
最後の段ボールがようやく空になり、ふたりでほっとひと息をつく。

それにしても広い。
社長が「好きに使っていい」と言ってくれたこのスペースだけでも、私が以前住んでいたアパートの十倍ほどの広さがある。


「ありがとうございました。本当に助かりました」

「いえいえ。あとは細かい配置を少しずつ調整していけば大丈夫ですよ」

沖野さんは軽く伸びをすると、時計をちらりと確認した。

「それでは私はこれで失礼しますね。何かあったらまたお気軽にご連絡ください」

「はい。今後ともよろしくお願いします」

玄関まで見送ると、彼女は去り際に意味ありげな笑みを浮かべた。

「成田さん……今夜、緊張で倒れたりしないでくださいね?」

「え?」

「形だけだとか言いつつ仕事よりあなたを優先するあたり……社長、本気みたいですから」

「あはは、そんなわけ───」

まともな返事をする間もなく玄関が閉まる。

もう……沖野さんっては深読みがすぎる……。

静まり返った廊下でひとり、私は苦笑いを浮かべたのだった。
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