祝福のあとで

②

二度目に会ったのは、初回の打ち合わせから一週間後だった。

 確認事項の共有と、演出内容のすり合わせ。
 名目はそれだけ。

 それでも、予定表に「ヴェリテ・ブライダル」と記された時間が近づくと、
 ひかりは自然と背筋を伸ばしていた。

「お疲れさまです」

 先に声をかけてきたのは、あきだった。

 前回と同じ、仕事用の表情。
 でも、目が合った瞬間だけ、ほんの少しだけ柔らぐ。

「お疲れさまです」

 それ以上、言葉は続かない。

 会議室のテーブルを挟んで向かい合う。
 資料を広げる音が、静かに重なる。

「席次、こちらで最終案を出しました」

 あきが差し出した紙を、ひかりは受け取る。

「ありがとうございます。動線も問題なさそうですね」

「新郎側の親族が多いので、導線は詰めています」

 説明は簡潔で、無駄がない。

 ——変わらない。

 あの頃から、彼はずっとこうだった。
 先回りして、最短で、正解を選ぶ。

「ただ」

 ひかりは一枚、別の資料を指差した。

「この演出、当日の進行が少しタイトになります」

「問題ありますか」

 すぐに返ってくる問い。

「進行自体は問題ありません。でも、余白がなくなります」

「余白、ですか」

「新郎新婦が、呼吸できる時間です」

 一瞬、あきが黙る。

 否定ではない。
 考えている、という間。

「……なるほど」

 やがて、ペンを動かす。

「じゃあ、ここを削って、こちらに回しましょう」

 判断は早い。

「ありがとうございます」

 言葉を交わしながら、
 ひかりは、ふと気づく。

 この人とは、
 昔も、今も、
 仕事の話なら、何の齟齬もない。

 だからこそ。

 プライベートに踏み込まなかった理由も、
 今なら、少しだけわかる気がした。
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