Toxic・Romance
「上手にお祝いが出来なかったんです、私」
振り絞った声は、自分でも驚くほど静かだった。喉の奥で感情を押さえ込んで、形だけきれいに整えたみたいな声。
片桐さんは、途中で口を挟むことも、視線を逸らすこともなかった。ただ、私の言葉の終わりに小さく頷いてくれる。そのたびに、続きを話してもいいんだと思えた。
「大好きなのに……大好きな二人が結婚するのに、素直に喜べなかったんです」
情けなくて、ずるくて、言葉にした瞬間、胸の奥がぎゅっと縮んだ。
「なあ、好きな人の幸せを、本気で祈れる人間がいる?そんなの、詭弁だね」
それは分かりにくいけれど、やさしい断定だった。
彼の一言で、張りつめていたものが一気にほどけた。
「……っ、」
下まぶたからふくらんだ涙が下まぶたから勝手に溢れ、流れ落ちた。止めようとする前に、視界が滲む。
片桐さんは、慰める言葉を重ねない。ただ、少しだけ距離を詰めて、低い声で言う。
「月島さんは十分、頑張ってるよ」
それだけで、もうだめだった。
「今度は……今度はちゃんと、お祝い言います〜!」
声を上げてわんわんと泣く私を見て、片桐さんは「子どもかよ」と、困ったように笑った。
泣いてもいい場所があることを、私はその夜、はじめて知った。