Toxic・Romance


「きみは簡単に騙されそうだね」

 たまに心配になる、と言いながら、片桐さんは一枚の毛布をお互いに着せると、徐に映画を選びはじめた。

 何、突然、悪口を言われたの?私。悪口ですよね?今の。

「いま、騙されるところありましたか?」

「そうだね。騙されたのは俺の方だ」

「騙されたんですか?誰に?」

「月島さん」

 心外だ。

「騙してませんよ」

 騙されることはあっても、騙したことはない。片桐さんをモチーフに内緒で小説を書いていたけれど、バレちゃったし。すると片桐さんは涼やかな笑みを浮かべた。

「ニックネームだと思ったんだよ、“ゆうゆ”って名前。この新卒なめてんな、って。大学生活の延長線みたいな、ぬるい仕事しかしないんだろうなって。騙されたわ」

 それは悪口なのか、褒め言葉なのか。

 いずれにせよ私はそんな印象を持たれていたらしい。そりゃあ、エリート様からみたら、下請けの新卒なんてそんなものだし、私の中の片桐さんの印象の方が悪い。

「でも、私も片桐さんの印象は最悪だったのでお互いさまですよ」

 当初の印象を話せば、彼は「そうだったわ」と何かを思い出すかのように口角を上げた。
< 138 / 249 >

この作品をシェア

pagetop