Toxic・Romance
「きみは簡単に騙されそうだね」
たまに心配になる、と言いながら、片桐さんは一枚の毛布をお互いに着せると、徐に映画を選びはじめた。
何、突然、悪口を言われたの?私。悪口ですよね?今の。
「いま、騙されるところありましたか?」
「そうだね。騙されたのは俺の方だ」
「騙されたんですか?誰に?」
「月島さん」
心外だ。
「騙してませんよ」
騙されることはあっても、騙したことはない。片桐さんをモチーフに内緒で小説を書いていたけれど、バレちゃったし。すると片桐さんは涼やかな笑みを浮かべた。
「ニックネームだと思ったんだよ、“ゆうゆ”って名前。この新卒なめてんな、って。大学生活の延長線みたいな、ぬるい仕事しかしないんだろうなって。騙されたわ」
それは悪口なのか、褒め言葉なのか。
いずれにせよ私はそんな印象を持たれていたらしい。そりゃあ、エリート様からみたら、下請けの新卒なんてそんなものだし、私の中の片桐さんの印象の方が悪い。
「でも、私も片桐さんの印象は最悪だったのでお互いさまですよ」
当初の印象を話せば、彼は「そうだったわ」と何かを思い出すかのように口角を上げた。