Toxic・Romance

「片桐さんは……」

 ――誰にでも、こういうこと、するんですか?

 ……そんなこと、聞けるはずもなかった。

「……なんでもないです。おやすみなさい」

 臆病な自分を隠すように目を閉じると、不意に、額へ柔らかな感触が落ちた。

 くちびるが触れた場所から、じわりと熱が広がっていく。  

 それは、くちびるを重ねるよりもずっとあまくて、それでいて胸が締め付けられるほど切ない、優しいキスだった。

「おやすみ。また明日」

 やさしいその響きに、私はほんの少しだけ、期待を抱いてしまう。私だけかもしれない、という毒のようなそれだ。

 それでも、いまだけはまだ、片桐さんの腕に閉じ込められたまま、私はゆっくりとその体温に溶けていった。
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