Toxic・Romance

片桐馨は駆け引きを覚えた?



 片桐さんのベッドでねむった。けれど、片桐さんは”寝室を貸してくれた“だけで、私たちにやましい事は何もなかった。

 もう一度言う。

 何もなかった。

「……おかしい」

 自室にて、ひとりごちる。

 だっておかしいものはおかしい。紳士な片桐さんは万々歳だ。けれど、著作権料を払うために、片桐さんは私を脅したんじゃなかったんですか。だったらなぜしないんですか。それとも、私から言うのはだめなんですか?そういうこと……?

 片桐さんのことが分からない。


──『なぜ、触れてくれないんですか?』


 モヤモヤとした気持ちで執筆していると、携帯小説のヒロインが薫を求めるシーンが完成してしまった。

 これじゃあ私が欲求不満みたいじゃん──!!

 うわあああ!と叫びたい気持ちを押し殺し、パソコンを閉じるとローデスクに突っ伏した。くちびるをふにふにと触る。まだ、片桐さんの感触をおぼえている。

「……期待、したのになあ」

 ぽつりとこぼれたことばは、完全に欲求不満のそれだ。
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