Toxic・Romance
ホットケーキをいただくと、買い物に付き合わされた。私が起きてくれないから、家を空けられなかったらしい。それに関しては私に責任があるので、片桐さんに付き合うことにした。着替えたかったので私の家を経由してもらった。片桐さんの車で。車……、
「こういうとき、どこに座ればいいんですか」
「きみが書いてる小説の中で、主人公が男の車に乗ることは無いの」
「えっ……あります」
「その子はどこに座ってる?」
「隣……」
「じゃあ、隣でいいんじゃないの」
「(そうなんだ……)」
おじゃまします、とちいさく呟いて、それから警戒心をむき出しのフクロウのようにほそーくなっていた。
移動中、スマホと連動しているらしいスマホが電話を通知した。カーナビに現れた「ちち」の文字を二度見して「出なくていいんですか!?」と言えば、「別いいでしょ」と片桐さんは言った。その後「はは」の文字があらわれて、「出た方がいいのでは!?」と焦ると「あとでかけ直すから平気」と片桐さんは平然としていた。
いま私は、片桐さんの日常の一部に存在している。
絶対楽しめない、移動の段階でこんなに緊張しているのに、楽しいはずがない。
私の不安を他所に、その一日はずっと楽しかった。月並みな言葉だけど、そう、楽しかったのだ。