Toxic・Romance
ホテルの部屋に入るとどこか急いだように扉が閉まる。その重厚な音が合図だった。振り返る暇も、言い訳をさがす猶予もない。
「……っ、」
壁に押し付けられる衝撃と同時に、片桐さんの唇が降ってきた。はじめから濃厚で、渇いたなにかを求めるためのキス。あつい舌先が躊躇なく内側を侵食し、私の思考を端から順に塗りつぶしてゆく。
「は、っ……片桐、さん……」
ようやく唇が離れたとき、見上げた彼の瞳はやわらかい形をしていて「ここでがっつくとか、ガキかな」と、彼は良心を放棄したようにため息を吐き出すと、もう一度、荒い息をつなぐように再びくちびるを塞ぐ。
「夕結ちゃん、聞きたいことあるんだけど」
「は……ぇ、」
色々なものが飛んで目の焦点がおぼつかなくなっていた私を引き戻すように、片桐さんが私の頬を撫でながら問う。けれど、なに、を聞く前に片桐さんがキスで塞ぐから、聞けなかった。
視界がぼやけてるのは涙のせいなのか、それともあまりにつよい性感のせいなのか、分からなかった。
「好きなやつ、いないの」
なぜ、こんなことを、聞かれているのかも。