Toxic・Romance
そのあまりにも不器用な優しさが、今の私には何よりも切なくて、それから、もどかしい。
「私……片桐さんのペースに合わせるの、嫌じゃないです。だから」
掴んでいたジャケットの裾を離し、震える指先で、今度は彼の手のゆびさきにそっと触れた。もう、練習とか条件なんて言葉で自分を煙に巻くのは終わりだ。そんな言い訳、何の役にも立たない。
「……私は片桐さんに、触れて欲しいです」
夜の静寂の中、トク、トク、と脈打つ鼓動。
初めて自分から踏み出した、取り返しのつかない一線。
見上げた先、片桐さんはひどく苦しそうに、けれど底知れない熱を孕んだ瞳で私を射抜いていた。
彼の手がゆっくりと持ち上がり、私の頬に触れる。冷えていた肌に彼の体温が移った瞬間、心臓が爆ぜた。
「……後悔しても、もう知らないよ」
低く、掠れたその声は、まるであまい宣告だった。 彼の手が私の後頭部に回り、逃げ場を塞ぐように強く引き寄せられる。けれど私はそうなることをわかって、一度も拒絶はしなかった。